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落とした飴に群がる蟻をじっと見つめていました。
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間に合わなかったクリスマス用の日記をこっそり置く場所。
年末恒例のオカルト番組見てたせいでぐっだぐだでした!

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 寒い夜だった。窓にはツリーの電飾が映り込んで、その向こうは一面、銀色だらけ。ガラスと触れている手が、だんだん冷たくなっていく。吐く息ばかりが熱くて、外の世界を白く霞めていく。もうどれだけこうしていたかも解らないけど、もっと今が続けばいいって思う。
 もう寝なさいって、お母さんが呼ぶ。まだ眠くないと私は答える。そのやりとりが何度か続くと、お母さんの声は、だんだん機嫌悪そうになってきた。まだ眠くない。欠伸を噛み殺しながら言う私に、お父さんが笑った。
 今日はクリスマス。なのに、私は風邪引き。あんまり体が強くないから、寒くなると何時もこうだった。友達のパーティも見送りで、つまらない。今頃みんな、交換したプレゼントを開けていると思うと、何だか悔しくなった。
 お母さんが私の背を叩く。早く寝ないと、サンタさんが来ないって。ずっと子供だと思ってる。もう、プレゼントを置いてくれるのが誰かなんて、とっくに知ってるのに。
 くしゃくしゃに顔を顰めて、私なりの、とびっきりの反抗をしてみせる。お母さんは呆れて、それからすぐに笑った。元気になったら新しい靴を買ってあげる。そう言って、私の頭を撫でてくれる。そんなことで誤魔化されない──そう思うけど、やっぱり嬉しくて、顔がにやけてしまっていた。
 冷たいはずの布団は、お父さんが湯たんぽで温めてくれていた。潜り込んでから、縮こまって、熱がこもってくるまで震える必要もない。だんだん、うとうとしてくる。たくさん寝て、早く元気にならなくちゃ。新しい靴は、どんな色がいいかな。赤色、白色──

* * *

「おおおおぉぉいこらぁぁああああああ!」

 古銭ちゃんが大騒ぎしている。瞼を起こすと、見慣れた店の中だった。そうだ、大掃除をするために、ちょっとだけ戻ってきたんだった。畳の上で寝転がっていた体を起こして、うんっと伸びをする。

「おはよう、古銭ちゃん」

「戻ってきて三秒で寝るとかお前はあれか、猫型がいないと駄目な奴か!」

「ポケットほしいねぇ」

 空のダンボールがいくつも転がっている。すぐに必要なものと、そうでないものと、分けて整頓するつもりだったのに、全く何も進んでいない。大掃除って、どうしてこんなに気が散るんだろう。久し振りに手に取った漫画とか読んでいると、つい時間を忘れてしまって、そのまま眠たくなってしまう。
 とりあえず漫画から、同じタイトル同士を重ねておいて、箱の中にしまっておく。また読みたくなるかもしれない、そう思って、あれもこれも本棚に残しておくと、すぐに一杯になってしまうから。
 本の片付けが終ったら、次は在庫の整理。なくなりやすいものは、何時でも出せる場所に、あんまり減らないものは、奥の方に。そろそろお菓子も少なくなってきたから、次までに仕入れをしておかないといけない。
 掃き掃除をして、拭き掃除をして、普段は気にしない狭い隙間にも気をつけて──そうしていると、あっという間に時間が過ぎていく。そして、疲れで体が重くなる。

「ほらほらキビキビ働きなさいよ!」

「……口ばかり動かしてる子はいいねぇ」

 ちょっと愚痴っぽくなるのも仕方がない。せめて古銭ちゃんに手があったらって、今は少しだけ思ってしまう。それでも、きっと手伝ってくれないだろうけど。溜息一つで、いくつか歳を取る──だとすると、古銭ちゃんといたら、私は一気に老け込んでしまいそう。

「お」

「降ってきたねぇ」

 忙しいばかりで、どこにも遊びにもいけない。でも、悪いことばかりでもない。
 気がつけば、窓の外には粉雪。今日も冷えると思ったら、やっぱり降ってきた。古銭ちゃんと一緒に窓辺に座る。ガラスに掌を当ててみると、思った以上に冷たくて、指がかじかんでしまいそうだった。
 こんな景色は初めて。雪なんか冬になれば何時だって見える。そう思っていたけど、ここの雪は、今まで見た中で二番目に綺麗だ。漂うマナの光を受けて、色取り取りの輝いている。舞い散る度に彩りを変えて、キラキラと瞬いて──まるで、空から星が降ってくるみたい。眩しすぎて、泣いてしまいそうだった。

* * *

 目を覚ますと、枕の横にプレゼントが二つ。赤い箱と、青い袋。赤い箱に手を伸ばす。金色のリボンを解いて、包装紙を破かないように、丁寧に剥がして。ずっと私が欲しがっていたものだ。包み紙と同じ、真っ赤な屋根の、人形のお家。
 青い袋は、大きさと形から見て、きっと新しいサッカーボールだ。こっちはお父さんからのプレゼントかな。もう、ボールも古くなっていたから、嬉しいな。きっと、喜ぶだろうな。

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